人類の起源に関しては、新しい化石の発見と遺伝学的な研究が進みかなりその道筋が分かってきました。それにしても、ネアンデルタール人の化石から遺伝子情報を取り出して分析する訳ですから学問の進歩はすごいですね。 そうした研究から分かってきたことを整理すると次のようになります。
①人類とチンパンジーは約700万年前にアフリカにおいて分岐した。 ②180万年前頃にアフリカを出て、ユーラシア大陸に広がったのがホモ・エレクトス。 ジャワ原人、ペキン原人などが代表的ホモ・エレクトス。前者は160万年前~10 万年前ペキン原人は75万年前くらい。両者とも現生人類の祖先ではない。 ③ホモ・ハイデルベルゲンシスからネアンデルタール人とホモ・サピエンスの先祖が今 から40万年ほど前に分岐したらしい。分岐してヨーロッパに住み着いたものがネア ンデルタール人に進化し、アジアに進出したものがデニソア人となった。そして、ア フリカにとどまったものがホモ・サピエンスに進化した。その時期は30万年前くら いだろう。 ④我々の先祖であるホモ・サピエンスがアフリカを出たのは少なくとも6万年前。この 人たちがネアンデルタール人やデニソア人と交雑しながら進化し、世界中に広がり、 現在にいたっている。(非アフリカ現代人の遺伝子にはネアンデルタール人由来、デニ ソア人由来の遺伝子が数%入っていることが実証的に分かっている) ⑤現在、生存しているのはホモ・サピエンスのみで、ネアンデルタール人、デニソア人 は4万年ほど前に滅亡した。数万年の長期に渡って3種類の人類が共存していたらし いが、われわれの先祖がもっとも環境に適応して生き延びた。 だから、ネアンデルタール人はわれわれの直接の先祖ではないわけですね。人類の亜種であったが、袋小路に入る環境に適応できずに滅びてしまった。ただ、旧石器も使用し文化はもっていた。 このしたたかに生き残ったわれわれの祖先も今から7万5千年前のインドネシアのスマトラ島にあるトバ火山の大爆発で滅亡の縁に立たされます。凄まじい爆発で世界中の平均気温が5度ほど下がりました。火山噴出物は1000立方キロ以上という爆発です。1000立方キロとは、1辺が10キロ(富士山の3倍)のサイコロの容積です。途轍もない爆発ですね。その後6000年間に渡り寒冷化した気候が続いたことが分かっています。いわゆるトバカタストロフです。 ホモ・サピエンスは人口規模で1万人ほどに縮小したらしいのです。危なかったですね。現代人類の遺伝子パターンが多様性がないのは、この事件のおかげであるといわれています。 現在、人類は繁栄を謳歌しています。しかし、繁栄しすぎて地球環境を傍若無人に攪乱しています。未来は必ずしも明るくないようです。我々の遠い先祖であるホ乳動物の齧歯類(ネズミの仲間)は中生代の巨大隕石衝突の冬もなんとか生き抜きました。身体が小型だったことが幸いしたといわれています。身体の大きかった恐竜は絶滅しました。今後、巨大隕石が地球に衝突する確率はほとんど無視していいかもしれませんが、それよりも現在の人類の活動のほうが人類の行く手に暗雲をもたらしているかも知れません。 ベスト自修館月刊誌「じゅくであ」より抜粋